!!CAUTION!!

この小説は

 1.暴力的な性的表現を含みます
 2.非常に救いのない結末を迎えます
 
このため

 ・本多が御堂さんを強姦するなんて耐えられない
 ・別れ話は読めない
 ・読んでから苦情をいいそうだ

という方はウィンドウを閉じてください。
読後不快な思いをされても当方は対応いたしかねます。



バッドエンドLOVEなお姉さま方はずずいとお進みくださいw
本編で陵辱描写があるメガミドとは事情が異なりますし、本多の性格を好いてらっしゃる方には
ショックが大きそうなので注意書きを置かせていただきました。
ご了承くださいませ。



























BAD END ROUTE











「なにを・・・する、つもりだ・・・」
浴衣の袷を肌蹴られ畳に押し倒された状態で御堂の口を付いて出たのはそんな台詞だった。
この状況を考えれば奇妙な言葉だろう。
だが御堂にしてみれば当然の台詞だった。
今まで一度たりとも、本多が御堂を無理矢理に押し倒したことなどなかったのだから。
驚きはつまり御堂が本多に向ける無意識の信頼の裏返しだったが、本多は気付かなかった。

御堂の一言で本多の表情が静かに移る。
何か痛みを訴えるような哀しげな表情から、酷薄で残酷な表情へ。

そして、唇の片端だけをクイと持ち上げて、笑った。
「何を?いまさらカマトトぶるのかよ。アンタの言う“本多”と何度もやってることだろ。」
「な・・・・っ」
氷の剣のごとき声に御堂は息を飲む。

目の前の男が誰なのか、本当にわからなくなった。


本多はこんな目で私を見ない。

本多はこんな言葉で私を辱めない。

本多は、こんな声で私に話しかけない。


そう、本多は・・・
本多は、さっきまでの彼のように、優しい眼差しで見つめ、あけすけな言葉で好意を表現して、快活に笑い、人の心を思いやる、そんな男だ。




さっきまでの・・・・彼、のように・・・。




このとき漸く御堂の中で、記憶を失う前の本多と記憶を失った後の本多が一つになった。



そうだ、記憶が無いだけ。
記憶が無いというだけで、目の前の男は確かに己の愛した本多なのだと。



「ほん、だ・・・っ」
君は、君だったんだな・・・心の中で呟いて御堂はそっと手を伸ばす。
先ほどまでの本多なら、自分を見る御堂の瞳に宿った心の変化に気付いたかもしれない。
だが遅かった。
音を立てて本多はその手を弾き落とす。
「呼んでも“アイツ”は助けてくれませんよ。あんたの大好きな“本多”は今どこにもいねぇんだろ。」


自分が御堂へ向ける愛を、そして自分自身の存在を否定された哀しみは憎しみへとその姿を変えてしまった。



憎しみの矛先は二つ。

御堂の愛を独占する“自分”と
決して己を受け入れない、御堂



「壊してやる・・・、お前らを、俺は、壊してから・・いく・・・」



御堂の手を畳へ縫い付ける力がぐぅと増す。
「っ・・・」
歪む表情を、本多は笑った。
瞳からは涙が零れていたが、それは確かに嘲笑と言っていいだろう残忍な笑みだった。


御堂は後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を感じた。



あの快活でまっすぐな男にこんな笑みを植え付けてしまったのは、紛れもなく・・・





(私、だ・・・・)





至近に迫る男の目から放たれるのは憎しみと悔しさと闇を背負ってしまった愛情。

御堂の脳裏を以前本多が見せていた表情が次々とよぎる。
今の表情からは想像ができなくなってしまったそれ。

蘇る本多は・・・思い出の地を二人で再訪したときのそれだった。


満面の笑み、ころころと良く変わる表情、優しげな瞳、静かな面持ち。
そこに僅かに滲んでいた切なさに、御堂は記憶を辿って初めて気付いた。


どうして気付けなかった。

今の彼を見ようとしない御堂に本多は目の前で傷ついていたというのに。


見えていたのだ。

記憶に刻んであったのだ。



なのに、何故、今になるまで目を逸らしていた?


本多がこんな、こんな表情しか浮かべられなくなるまで、どうして?




御堂は崩壊していく思い出が剥く牙から自分を守っただけだった。
だが結果的にそれが、取り返しの付かないところまで本多を傷つけた。




「本多・・・」

このとき確かに御堂は目の前の本多を呼んだ。
だが、もう、本多にその声は届かなかった。

(まだアンタはっ、前の俺を呼ぶのか・・・・!!)

「・・・・呼んだって無駄だっつってんだろ」
御堂の声を以前の自分へ助けを求めるものだと思った本多の中でマグマのような感情が一層激しく燃え上がる。
これ以上その声を聞きたくなくて、己の浴衣の帯を抜き去ると御堂に轡を噛ませた。
「やめろっ!!本多、嫌だ・・・!!」
自由になった手で御堂が迫る帯を押しのけようとする。
本多は舌打ちをすると御堂の身体を力任せに反転させ、畳へとうつ伏せに押し付けた。
背中に乗り上げ、上半身の自由を奪う。
今度こそ轡を噛ませようとする本多から、御堂は首を振って逃れようとした。
「嫌だっ、頼む、本多・・っ、待、ん、んんんっ!」

伝えたい言葉がある
告げなければならない事がある

だが、必死で顔を背けようとする御堂を封じ、帯は容赦なくその口に食い込んだ。

舌が押さえられ、言葉を発せ無くなる。
それでも必死で御堂はこの状況を打開しようとしたが、身を捩って抗うその姿を見る本多には怒りしか与えられなかった。
「そんなに俺が嫌かよ・・・」
地を這うような声に、御堂が必死で振り返る。
「んーっ、んーー!」
違う、話がしたいだけだ、君と話がしたいんだ、そう訴える言葉は単なる音にしかならずに虚しく霧散する。
それでも御堂はのしかかる男を肩越しに振り仰ぎ、何とかそう伝えようとする。

だが、本多には伝わらない。


御堂が無意識に見せる表情に疲弊した彼は、もう御堂の感情を読み取ることを放棄してしまっていた。



御堂が呼ぶ名は全て過去の自分を求めるものにしか聞こえず

御堂が向ける視線は疎外感しか与えず

御堂の動きは己を拒絶するものとしか映らない







愛情は闇に飲まれ、憎悪へとその姿を変えて。

己を拒絶する世界を・・・御堂と、以前の自分を、壊したい、その一念が、がらんどうのような心の中に反響して膨れ上がる。







本多は眼下でもがく御堂の身体を押さえつけ、乱れた浴衣の裾を腰の上まで一気に捲りあげた。
「ッッ!!」
御堂が目を剥いて本多を振り仰ぐ。
ニヤリ、と彼はそれに笑みを返した。


(壊してやる、アンタも、“俺”も)


大きな手が露わになった腰を力任せに掴んで引き上げる。
「んんん!!」
半身を畳に伏せ、腰だけ持ち上げられた状態。
次に何をされるのか理解した御堂は力の限り抗った。


(駄目だ!!君はそんなことをしたら、駄目だ!!!)


戻れなくなる。

不吉な確信が鈍器となって御堂を殴った瞬間、乾いた穴に凶器が突き立てられた。


「ぐ、ぅ――――ッッッ!!!!」
「っ、ぅ・・・」
異物の進入を拒む入り口のキツさに本多の漏らした呻きを、御堂の押さえ込まれた悲鳴がかき消す。
無理矢理に身体を開く行為は本多にも苦痛をもたらしたが、彼はやめなかった。
激痛に硬直する御堂の身体を押さえつけて小刻みに腰を揺すりながら凶器となった肉棒を突き刺していく。
「ッ、ッッ・・―――!!」
御堂は声さえ出せず、息を引きつらせるだけ。
身体をこじ開けられる痛みに流れた涙が音も無く藺草(いぐさ)に暗い染みを生んでいく。
漸く全てが埋め込まれたときには、御堂は指先に力を入れることさえ叶わなくなっていた。

ぐったりと力を抜いて肩で息をする彼が閉じる気力も無いとばかり空ろに開いた瞳から零す涙を見ても本多には何の感情も生まれなかった。

パタ、と浴衣に覆われた御堂の背に汗が落ちる。
本多はまた口の端を歪めると、浴衣の襟首を掴んで強引に背を肌蹴させた。
「っ、う・・・っ」
乱暴なそれに身体を仰け反らされ、その拍子に埋められた杭が奥を突いて御堂が呻く。
本多の手が御堂の胸に回り、畳にこすれて硬くなった乳首を弄る。
同時に、腰が打ち付けられ始めた。
入り口が切れたのか、動きは徐々に滑らかになっていく。

揺さぶられ、くぐもった悲鳴を漏らしながら、御堂はきつくきつく目を瞑った。


何も見たくない、何も感じたくない、何も聞きたくない。



(早く、早く終わってくれ・・・早く・・・)



白磁の頬を次々と涙が伝う。


恋人にレイプされているという現実に打ち砕かれた愛情の血か。
記憶を失った彼を受け入れられずに壊した悔恨の涙か。


奥を突かれるたびに、心にひび割れが出来ていく。


(早く、・・終わって、くれ・・・・っ)

心が砕け散ってしまう前に。


(本多っ、本多、本多・・・!!!)


一片の気遣いも無く暴力的に腰を打ち付けてくる男の名を御堂は必死に呼んだ。
布に阻まれて音にならないそれは血を吐くような悔恨の叫びでもあった。




他人の顔をされるのが辛かった

思い出が消えていくのが怖かった

恋人が恋人でなくなったまま何事も無いかのように流れていく日常が苦しかった

自分たちの関係が空想の産物であるがごとく淡く消えていくのを感じて恐怖した

知らぬ間に薄れて消えるよりも、自分で封印してしまったほうが楽だった


そうして御堂の心は、現在の本多と過去の本多を分離させた。




すべては御堂が本多を愛していたから。
現実から逃げなければ、耐えられなかった。




そうして、本多を傷つけてしまった。



壊してしまうほどに深く。

自分自身に嫉妬し、憎悪を抱き、壊そうとまで思うほどに酷く。






それもまた、本多が御堂を愛していたから。






御堂の背を押さえつけ力任せに犯す本多の頬を涙が伝う。



(なんで、こんなことに・・・っ、御堂・・・!)



恋をした、それだけだった。


恋人だと聞いて驚いた自分に彼が見せた、砕けそうな笑みが頭から離れない。
この人にこんな顔をさせたくない、そう思って、咄嗟に手を掴んだ。
それから知ったいろんな表情に惹かれていって

それでも彼は自分を見てはくれなかった


美しいアメジストの瞳は自分を通り越して以前の自分を探し

欲して已まない彼の心は記憶を失う前の自分を求めて

いつの間にか誰よりも大切な存在となった彼に、しかしどうしても自分を認めてもらえない。


その事実は、記憶を失った自分が存在する意味さえ見失うほどに辛いものだった。


認められるどころか、見てさえもらえない。




省みられない慕情は徐々にその姿を変えて、ついには底なしの憎悪になってしまった。




御堂の背に本多の涙が落ちては砕け散る。





(御堂・・っ、俺は・・・・!)






アンタが好きなだけだ


こっちを向いてほしいだけだ


本当はこんなこと、したくないんだ



愛してる、だけなんだ







御堂―――!!








悲鳴のような咆哮は言葉にならず、ただその衝動の激しさだけを御堂に伝えただけだった。











「・・・・」

大きな窓から朝日が差し込む。
御堂は晒された裸体に乾いた白濁をこびりつかせ、秘部から精液を滲ませたまま、空ろな瞳を天井に向けて横たわったまま動かない。

それを抱き起こす手があった。


本多だ。



逞しいその手は小刻みに震えていた。







記憶が戻ったのだ。
残酷なまでに、完璧に。








「み、どう・・・」

紛れも無い自分の手で無残に踏み荒らされた恋人の身体を恐る恐る抱きしめる。

御堂の瞳が揺れて、本多を見た。



意識はある。
しかし、紫色の瞳は何の感情も宿さない。



ただ哀しげに、記憶を取り戻してしまった恋人を見つめた。


広い背中を抱き返すはずの手は、だらりと下がったまま。

記憶を取り戻したことを喜ぶはずの唇は力なく開かれたまま、干上がった喉も動きはしない。


涙を流し続けた瞳はぼんやりと本多を見つめるばかりで、何を語ろうともしなかった。



本多もまた、何もいえず、ただ、その身体を抱きしめる。






感じるのは愛しい人の体温ばかり。
もっと奥深くから繋がっていたはずの何かはブツリと途切れて行き場をなくしてしまったかのように、感じられなかった。























落陽。


闇夜に天空を奪われんとする太陽が、断末魔のような赤で世界を埋め尽くす。


血のようなその光が中央を貫く一室。


赤に切り取られた両側の影に、男が一人ずつ、いる。


笑い声、他愛も無い喧騒、甘い囁き・・・以前その部屋に響いていたものは何一つ聞こえない。


寄り添うはずの二人は横たわる光を隔てて離れ、お互い、目を見ることも無い。







互いが互いを信じ切れずに傷つけた



寂寞と不信は傷となって、修復のときを逸したまま膿んでいく。












太陽が沈む。





御堂はぼんやりと、地平線に飲み込まれていくそれを見送った。





本多は徐々に消えていく床の光を見つめ続ける。








何も出来ず、





何をする気も起こさぬまま




















BAD END.


















|=3 サッ


|・)チラ