最初にあの男に強姦された日以来、毎日毎日神経を削り取られていた



蹂躙される身体と踏みにじられる尊厳

帰るとあの男がいるのではないかという恐怖



一人で居るときもそれは消えることが無い


自分の家なのに気が休まらない


中途半端な立てかけ方をした食器がキッチンで崩れて音を立てるだけで

インターホンが鳴るだけで




自分が立てたのではない音ならどんな些細な音でも心臓が飛び上がった





そんな状態で眠れるはずがない


長い時間、やってこない眠気に苦しみ続けて、漸くまどろみ始めた所でアラームが鳴る


食事は喉を通らない


当然のように集中力は落ちる


仕事でも些細なミスばかり


上司から部下から寄せられる視線は最初の心配そうなものから、信頼の色をなくした冷たいそれになって





無理をすればするほど身体は疲れる



そんな事は分かっている





でも、自分を追い込んでいないと

仕事のほうへ意識を縫い付けておかないと




あの男の影から逃れられなかった





だから逆効果とわかっていて、残業や休日出勤を繰り返した








それが遂に限界に来て、週末に会社の前で倒れた








よりによって、それを見つけたのはあの男で




その日は何もされなかった










言葉だけで、自尊心を打ち砕いていった











もう少し効率的に仕事が出来ないのか、だと!?



1人で抱え込むことだけが責任感じゃない、だと!?




一体どの口がそんな妄言を!!


誰のせいだと・・・!!




誰のせいで、誰のせいで私の人生が狂ったと思ってるんだ!!!!








なのに、“覇気のないアンタを抱いてもつまらない”といったあの男に私は何を言った?








あろうことか、あの男に向かって弱音を吐いたのだ



プライドの欠片もない、惨めな戯言(たわごと)を






その私に一顧だにせず、あの男は出て行った















我慢ができなかった
そんな自分に
















あの男に愚痴など吐いた自分が許せなかった







あの、私をここまで貶めた男にすら価値を感じられないほど堕ちた自分など


そんなもの、私ではない







私は必死で這い上がろうとした


一度沈みかけた絶望の沼の底から



あんな男に影響される自分を消し去るために






私は、あんな男の為に仕事に支障を来たしはしない



私は、あんな男の為に人生を狂わされたりしないんだ



あんな男に屈しはしない







“今までならこれくらいのこと自分でなんとかしているだろう?”だと!?




ああ、なんとかしてやろうじゃないか・・・!










 こ れ く ら い の こ と なんか・・・!!!











お前の思い通りになどさせない




















“私”は・・・!





















必死で睡眠を取った


食事も無理矢理胃に詰め込んだ


集中力を限界まで搾り出して仕事をした


ミスは減った


上司や部下からの視線にも安堵の色が含まれ、やがて以前のような畏敬の眼差しに変わりつつあった


あの男は変わらず私を嬲ってきたが可能な限り自我を保って敢然と抵抗した


身体は快楽に従順でも心は絶対に明け渡すものか、と




その矢先だった







あの男は私を拘束し・・・

それを解かないまま、帰った








私は・・・・あの男に監禁されたのだ






















あれから一体何日経ったんだろう・・・



もう腕の感覚は無い

ずっと戒められたまま

暗い部屋を見渡す


時計を見るとまだ五時だった



私が外へ出ないうちに随分と日が落ちるのが早くなったようだ






外・・・もうどれくらい、この部屋から出ていないんだろう






そもそもこの壁際からすら動けないでいる



もう今日の日付すらわからない



時間が進んでいるのを知らせるのは時計と太陽だけ



日付が変わっているのが分かるのは
毎日ここへくる男の服が変わっているから



専務からも部下からも電話は入らなくなった

最初は固定電話も携帯電話もひっきりなしに私を呼び出そうとしていたのに





多分、もう、会社に私の椅子はない









アイツが奪っていく


なにもかも





私が今まで築き上げたものを全て








努力して得た今の地位も名誉も


作り上げた自我も


ゆるぎない自信も


守り続けたプライドさえ




徹底的に踏みにじられ、粉々に叩き割られた




それでも私が抗い続けるのは











ただ


あの男に屈したくないという・・・意地だけだ













意地など、張るだけ邪魔になるものだと思っていた


だが今は・・・意地だけが、“私”を“生かして”いる





でもそれも限界なのかもしれない





排泄まであの男の手によって成される日々

人間として最低限の尊厳すら踏みにじられる中で自分を保つのに、意地という命綱はあまりに頼りなくて


毎日毎日磨り減っていくそれはもう直ぐ切れてしまうだろう




あの男の甘い囁きに屈しそうになる


懇願を命じる言葉に首を縦にふりたくなる


屈従を要求するあの男の足元に全てを投げ出せたらどんなに楽だろうか



そう思う心を押し殺すのも





もう・・・辛い









そんなのは嫌だった


絶対に











死んでしまえたらいいのに






何度も思った






身体が先に死んでしまえばいいのに










このままでは心が先に駄目になる






















“私”が“死んで”しまう





















誰か










誰でもいいから












私を










殺してくれ
































“私”が死んでしまう前に


































す、救いがない・・・・orz
なんか甘い話書きたいです甘い話・・・御堂さんが可哀想すぎる(書いたの誰だよ)
でも再会前の空白の一年を少し書かないとこの次に甘いメガミドは書けそうにないなぁ・・・・。週末の夜にこんなもの読ませてすみません(土下座)