「今から俺がアンタの価値観を根底からぶち壊して、その絶対的なポジションの違いを教えてあげますよ・・・一方的に、ですが。」



悪魔の声が、私の鼓膜を突き刺した。










態度が気に入らなかった。
突き詰めれば、嫌がらせ以外のなにものでもない売り上げ目標の上方修正をした理由はそれに尽きるのだろう。

大人気ないとは思ったが、そんな手段を使ってでも屈服させたいと思うほど、あの男の態度は不快だった。


たかが子会社の平社員の分際で、私のことを上から見てものを言ってくる。

敬語を使いながらも隠そうともしない人を見下した態度。


あの男に見下される理由など私には欠片も無い。


今の地位は努力の結果に得たものだ。
なぜその努力をせずに使われる側に甘んじている小企業の平社員などに私が見下されなければならない?


あの男は態度の全てが不愉快だった。



最初にプロトファイバーの営業権を取りに来たときからそうだった。

第一回目の会議の発言など不快の最たるものだ。

急にMGNに押しかけてきたときも。




不必要に鋭い指摘をして私を追い詰めるのを楽しんでいるかのような態度。



あのしゃべり方。

あの笑い方。


全てが気に入らなかった。



お前はうちの社の下請け営業の、それも私のお陰で仕事を貰った分際なのだ。




それを分からせようと、無理な売り上げ目標を設定した。




実現不可能なのは承知の上だ。

売り上げをあのレベルまで高めるのが目的ではない。



あの男に頭を下げさせるのが目的なのだから。



上方修正の撤回を求めに来たときもあの男は横柄な態度を崩そうとしなかった。



それが、私の神経を更に逆なでしたのは確かだ。
それで持ち出したのが“接待”だった。




肉体関係を示唆する素振りをしたものの、実際にする気はなかった。



少し本気を見せてやれば音を上げるだろうと高を括っていたのだ。










「ひぐっ・・んぅ・・っっ」


苦しい

気持ち悪い

異物感に吐き気がする


逃げようにも、縛られた手首を押さえつけられていて、動かない



シャツ一枚しか纏えず

男に組み敷かれて

体内に突き入れられた指に犯されて




なんでこんなことに





確かに好意的な態度はとらなかった


嫌がらせをしたのも事実だ




でも




それでも






こうまでされねばならないような何かを、私はしたか!?






「んんーーっ!んぐ、んっ、んっ!」

精一杯身を捩って抵抗する
拘束も責め苦も弱まらず、頭上から嘲笑が降ってきただけだった

「無理に抵抗しないほうがいいですよ?痛みを感じるのはそっちですから」

もがく私にまた、悪魔の声が囁いた



「あんたがどう感じようが、俺にとってはどうでもいい。単に、アンタを犯ったっていう既成事実がほしいだけだからな。」



私、は・・・


私は、この男にとって




この男の征服欲を満たすためだけの存在なのか





使い捨ての、肉塊







地位も名誉も


いや、人間としての尊厳すら、顧みられない








「・・・っ」

喉が引き攣った音を立てた
同時に、指を入れられていた箇所に別の感触を感じる



嫌だ・・・!!


止めろ・・・!!!





止めろ、頼む、それだけは、お願いだから止めてくれ・・・・!!!










この時私の懇願を許さなかったのは、矜持でも理性でも意地でもなく、口枷だった










男の猛った性器が力ずくで捻じ込まれた


「ぐぅ――――ッッ!!!!」





意識が、飛んだ








灼熱の鉄串で脳天まで刺し貫かれるとしたら







こんな











痛み











だろうか








違う、鉄串なんかじゃない




これは、鉄串のように激痛の代償に死を与えてくれもしない









今、突き入れられているのは、



男の、







ペニスだ・・・








私を犯す男が埋め込んだそれを強引に動かす

その度、身体を引き裂かれるかと思った


いっそバラバラになってしまえばいいのに



そうすれば心の壊れる音を聞かなくて済むかもしれないのに




身体はただ揺さぶられるまま揺れるだけ

動きに合わせて私の口からは無様な呻き声が漏れる

口からハンカチが外されたが、もう、何も言える状態ではなかった


辛うじて搾り出した言葉も綺麗に無視される





私に権利などないのだ
それはあたかも、屈従者が絶対的支配者に対し権利を持つ道理はないから、というように






奴隷にでもされた気分だった


支配者面をした、私の下風に立っていたはずの男は、私の様子など一顧だにせず好きなように体内を蹂躙する





私はみっともなく悲鳴を上げて身を捩り、激痛と屈辱の中で無力にもがくだけ









やがて男は動きを変えて



「っ、ぁ、アッ・・・・!」






痛みに、快感が混ざった







そんなこと望んでいない



望んでいないのに







同じところを刷り上げられるたび理性の砦が快楽の熱に溶けていく







「ふあっ、あ、っ・・んっ、は・・・んっ、んぅ・・・!」



勝手に背が撓り、男を締め付け、留めようも無く熱が上がって







嫌だ





こんな








嫌、な・・の、に・・・








全身を貫いていた痛みが快感に変わる



性器も隠しようも無く立ち上がる



男に突っ込まれて、恥知らずな声を抑えられなくて








いっそ殺してくれればいい



いっそ壊れてしまいたい





いっそ狂ってしまえたらいいのに







他ならぬ自分が



それを許さない














涙が零れた








目じりからこめかみを伝い落ちる、やけに熱いそれは・・・










自尊心の流した血だろうか











それとも










淫楽に溶かされた理性の残滓だろうか





















ごめんなさい御堂さん・・・でも貴方を見てるとどうしても・・・・苛めたくなるんです(鬼)