「ありがとうございます。では直ぐに伺います―――はい―――失礼致します。」

御堂は受話器を置くと大きく息を吐いた。
デスクの引き出しを引くと、封書がすぐに目に入る。


白い封筒に彼自身の筆で“辞職願”。


もう、耐えられなかった。
自身の執務室、大隈の執務室、会議室、トイレ、応接室、取引先、車中、ホテル・・・自宅。
忌まわしい記憶が残っていない場所など存在しないのではないかと思うほど、至る所で陵辱された。
佐伯と、大隈に。
握り締めた御堂の拳の中で爪が食い込み、手のひらが悲鳴を上げる。
端座するその封筒を御堂はゆっくりと手に取った。

その下に、パスポートと航空券。

日本に居る限り逃げられないのなら、海外に。
御堂はそう決意した。
例えあの忌まわしい映像が知り合いに流されたとしても、海外ならば回りに自分を知る人間は居ない。
誰にも連絡先を教えなければ、映像の流出を知らしめられることもない。
先日会った米国MGN本社の役員にN.Y.のコンサルティングファームを紹介してもらい、
転職の話は付いている上、こちらの本社には内密にするとの確約もとりつけた。
先ほどの電話は社長とのアポイントメントを取るためのもの。

辞表を直接彼に出すのだ・・・本来は、直属の上司である大隈に出すのが筋だが・・・。
いずれはここのトップにと前々から少しずつ築いてきたパイプが辞職の際に役立つとは、苦い皮肉である。

辞表が受理されたら直ぐに空港へ向かう予定だ。
人生の再スタートへ、持ち物はいつものビジネスバッグ一つ。
マンションの解約手続きも家財道具の処理も、だれか信用できる人間に頼んで向こうからすればいい。
とりあえずの必要経費は既にドルになっており、あとはカードが有れば向こうで生活を始めるのに困る事はない。
取るものもとりあえず、といった状態で逃げることに屈辱を感じないわけではない。
だが、身体と尊厳を貶められ続ける苦痛と恥辱に比べれば些細なものだ。
御堂は立ち上がり、襟元を正すと、封筒を手に執務室を出た。


秘書に了解を取り、社長室のドアをノックする。



これで、自由になれる。

そう、思ったのに。



「失礼致します」





返事を待って開けたドアの先、社長の隣に、大隈が居た。





「事が事だから、辞めるにせよ留まるにせよ、一度話し合いの場を持ったほうがいいだろうと思ってね。」

社長の声は御堂の耳を素通りする。

「御堂くんのような優秀な社員を手放すのはうちとしても痛い。解決できる軋轢が原因ならばこの場を使って修復してくれと大隈にも言った所だ。」




適当に取り繕う言葉さえ出なかった。
この場を切り抜ける出任せさえ思いつかない。






顔色を失った御堂の視線の先、大隈の顔に張り付いた酷薄な笑みが、彼の運命の歯車に異物が挟まった事実を告げていた。















「っ、んうぅっ・・・!」
狭いトイレの個室に御堂の押し殺した声が響く。
「社長に直訴とは、大層な事をしたものだね、御堂くん・・・」
抗う身体を蓋に押さえつけながら大隈は怒張した楔で彼を揺さぶった。
翻した叛旗は既に社長室のシュレッダーの中だろう。

会う前に電話で社長から次第を聞いたのだろう大隈は、態々、件のDVDディスクを持ってきていたのだ。
テーブルに置かれた資料の隙間から覗くそれの正体に気づいてしまえば、御堂に逆らう術などなく。

大隈の説得に応じる格好で、辞職願を取り下げるほか、なかった。

「んっ・・ふ、ぁっ、アッ、んんんっ!」
社長室を出て直ぐにトイレに引きずり込まれ、個室に押し込められて。
また、無様に、犯されている。
御堂の頬を生理的なそれではない涙が伝った。


何故、逃げられないのか。

何故こうも苦しまなければならないのか。



神や運命など信じない。
だが、掴めるはずだった明日を奪われ恥辱にまみれ続けなければならなくなった理不尽さに、神を、運命を、呪いたくなる。



「ふ・・・気持ちよさそうだな御堂くん。君は、こうして、いればいい、のだよ・・・!」
「ぃ、あっ、んぁあっ・・・!」
むき出しの腰を掴んで肉棒で奥を突けば、艶やかな嬌声が漏れる。
露わにされた下半身とは対照的に、ジャケットもそのままの上半身が劣情を誘う。

逃がすものか。

十数年、欲し続けて漸く好きに出来た身体だ。



いずれは佐伯を排除して己一人のものにと考えていた。
今回の事をきっかけに、一歩そちらに近付けようか。



大隈の唇が釣りあがった。
「聞き分けのない部下にはお仕置きをせねばならん。今日の君の仕事は、私を楽しませること、だ。」
そう言うと絶頂間際の御堂の性器を根元で戒め、己の熱を彼の体内に注ぎ込んだ。
「っ、はぁ・・は、ぁ・・・っ」
敏感な部分に叩きつけられた白濁に御堂の身体が震える。
放出を許されなかった熱が容赦なく牙を剥く。
ずるずると体制を崩し床にへたり込んだ御堂は己の後ろから響く金属の音に気付かない。
次は何をされるのか、解放への懇願を強要されるのだろうか、震える身体を抑えるように便座の蓋にしがみつきながら情欲に犯された頭で思う。

だが、上から降ってきた声は更に酷な命令を下した。


「早く身支度を整えて立ちたまえ。いつまでそうしているつもりかね。」


「っ、・・・?」
身支度という言葉を処理しきれず、後ろを仰ぎ見る。
スーツを整えた大隈が冷ややかな目に下卑た色を浮かべて見下ろしていた。
「な・・そ、んな・・・」
無理だ、と訴えかけて御堂は唇を噛んだ。

大隈が彼の状態を把握していないわけがないのだ。
彼の射精を拒んだ本人なのだから。


つまり、天を仰いだそれをそのままにオフィスへ戻れと言っているのだ。



この人は、どれだけ・・・




「どれだけ・・・、貴方はっ、貴方はどれだけ私を愚弄したら気が済むんだ・・・!!」




憎しみをこめて睨み付けた男の顔が屈辱の涙で滲む。
零せないそれの代わりに押しとどめていた言葉が堰を切って溢れ出した。

「こうまでされなければならない事を貴方にした覚えはない!私を潰すためなら今すぐ首にしたらいいし、
 佐伯を私のポストに付けたいのなら好きにすればいいでしょうっ、何故、こうも、私を貶めようとするんです・・・!!」

悲痛な御堂の叫びに返されたのは冷酷な哂い。
「辞めさせる?冗談ではない。それに私にとっては佐伯などどうでもいいんだよ、御堂くん。
 あれを引き抜いたのは君を抱きたかったからだ。取引を持ちかけてきたのは向こうだがね。」
大隈の骨張った指が御堂の頤を掴んで顔をあおのかせる。
痛みで歪む端正な面立ちに大隈はギリギリまで顔を近づけた。
若紫の瞳の中で恐怖が怒りを染め上げようとしているのが、心地よい。

「見ていたよ、君が新入社員のころから。ずっと、スーツの下の君の身体を想像していた。
 私に抱かれて快楽に堕ちる君をね。それがやっと叶ったのだ。離すわけがあるまい。君は私の人形で居ればいいのだよ。
 私が命じたときに、命じたように、その体を開けばそれでいい。ああ、安心したまえ、素直に腰を振れば昇進もさせてやろう。」



「!!」



カッと頭に血が上った、と、思った瞬間には大隈の頬を殴っていた。



「っ、う・・・っ」
「冗談じゃない・・・!!愚弄するのも大概にしろ・・・!!!」





何をおいても、最後の一言だけは、我慢ならなかった。

目も眩むような屈辱が御堂を揺さぶる。






だがそれに酔ったのも一瞬。
荒々しく前髪を掴んだ大隈に次の一手を封じられる。

「誰に向かって口を利いているのかね。逆らいたければ逆らうといいが、行動を起こす前に良く考えることだな。
 君が会社の誰に訴えようが私の一声で滑稽な狂犬に成り下がる。何なら私だけでなく、取締役会の連中に君を可愛がらせてもいいんだぞ?
 佐伯が何と言おうとあの男の人事権も私は握っているのだ。君に逃げ場などないのだよ。大人しく従うのが賢い道だとは思わんかね?」
大勢に犯されたいのなら話は別だが、と大隈は付け足して笑った。

きつく瞑った瞼を割って涙が一粒零れ落ちる。



握り締めた拳に当たって砕けたそれの感触に、御堂は更なる絶望を感じた。



「御堂君の今日のスケジュールは全てキャンセルしなさい。彼は私と詰めることがある。」
大隈は携帯でどこかを呼び出すとそう告げた。
目を瞠って絶句する御堂に邪な笑みが応える。
「安心したまえ。こんな面倒なことをするのはここ数日のことだ。君も毎日職務を滞らせてここにいるのは心苦しいだろうからな。
 商品企画部の部長職に適材が見つかったら君を取締役の一人に据えてやろう。」
「っ・・・」

意味もない役職を与えるのは、際限なく御堂の身体を玩ぶ為。


つまり大隈は御堂を完全に囲う気なのだ。


逃げ場がないという事実が御堂の精神を押しつぶそうとする。




いや、逃げ場はある。
ひとつだけ。



だがそれをする勇気が・・・事を然るべき機関に訴え出る勇気があれば、そもそもこんな問題など降りかかっていなかったはずなのだ。





この期に及んでもやはり、不特定多数の知人や他人に己の恥辱を知られるのは何よりも忌まわしかった。






だから



「さて、ではまず奉仕でもしてもらおうかね。私もそうそう君をかまっていられないのでな。」



そういって執務室へと歩き始めた大隈に続いて御堂は腰を上げた。







かみ締めた唇に血を滲ませながら。















カタン、と玄関のほうから物音が聞こえ、佐伯は顔を上げた。

(ようやくお戻りか)

ここ三日ほど、御堂を捕まえることが出来ずに焦れていたが流石に家には帰っていたらしい。
佐伯は嗜虐的な笑みを口元に刷きながら立ち上がった。
(さて、お仕置きはどうしようか)

しかし少し待っても御堂が姿を現さない。

リビングに灯りを見て踵を返したにしても、そんな物音はしなかった。
訝しく思いながら玄関へつながるドアを開ける。
電気も灯されていないそこに蹲る影があった。
「御堂・・・?」
異変を察してやや早足で近づく。
御堂は床に崩れ落ちた体勢で小刻みに身を震わせながら床に爪を立てて何かに耐えている。

「おい、御堂!」
「っ!!!」

一向にこちらを向かない彼の肩を掴んで揺さぶるとその身体が大げさなほどにビクリと震えた。
上げられた顔は紅潮していたが、そこにはべったりと恐怖が張り付いていた。

最早制御の外なのだろう涙が、御堂の頬を幾度も流れ落ちる。


「!」


自分でも良く分からない衝動に動かされて佐伯は彼を抱きしめようとした。


すると御堂は狂ったようにそれを押しのけようと暴れだした。
「っ、おい、御堂?」
「や・・だ・・・・っも・・嫌だ・・・っ、助け・・・・・っ」
うわ言のようにそう繰り返し佐伯から逃れようとするのだが、その瞳は濁って焦点を捉えず、佐伯を佐伯と認識してもいないようだった。
加えて時折不規則に身を震わせる御堂の様子から、佐伯はひとつの可能性に行き当たる。
「まさか・・・」
そう呟くと、暴れる身体をうつぶせに組み伏せ、スラックスをずり下ろした。

紅を刷いたように色を変えた秘部からピンク色のコードが垂れていた。

大隈が仕込んだのだろう。
動きに合わせてビクビクと惨めに震える御堂の性器はすでに吐き出すものも無くなろうとしている。
何度吐精したのか、下着はぐしゃぐしゃになっており辺りに濃厚な精臭を撒き散らしていた。
御堂を苛む淫具を抜き去る。


ビクンと大きく震えて脱力した彼を蔑む言葉が、何故か今日は出てこなかった。


汚れた下着とスラックスを放り、ついでにジャケットとベストも脱がせタイを解くと、佐伯は御堂を抱え上げるようにしてリビングへ連れ込んだ。
やや乱暴にその身体をソファに沈め、上からのしかかかる。
「っ・・・」
ソファへ投げられたことで意識がはっきりしたのだろう。
漸く佐伯を認識した紫苑の瞳が色々な感情を孕んで揺れた。
視線から逃れようと動くのを顎を捉えて阻む。
「あんたと三日連絡が取れなかった。プロジェクトの用件で聞いても“御堂は担当を外れました”とそればかり。
 妙だと思ったが・・・あんた、大隈に囲われてたのか。」
「・・・・」
サッと視線がそらされる。

その動作と、瞳に浮かんだ苦い屈辱の涙が、佐伯の問いを肯定していた。

すらりと白い脚を持ち上げ肩にかけ露わにした秘部はぽってりと淫らに熱を持って腫れている。
大隈が御堂を好きに蹂躙し続けたことの何よりの証しだ。

さらされた腿の滑らかな肌にも数え切れないほど多くの赤い痕。



佐伯は強烈な不快感に支配された。



碌々抗えもしない、疲弊しきった顔の御堂を睨む。
「それで?あんたは三日間唯々諾々と大隈を咥え込んで仕事もせずにセックスばかりしていたのか。」
「・・・っ」
凍りつくような怒りのオーラに、御堂は漸く己の置かれた状況の危険さに気づく。
だがもちろん遅すぎた。
男を退けようと動いた手はネクタイで拘束され、ずり上がって逃げようとする身体は腰を掴まれて阻まれる。
「い、やだっ、やめろ!これ以上は・・・!」
三日間執拗に陵辱され続けた身体も精神も、ここへ帰ってくるまでに惨めなまでに摩滅していた。
これ以上は耐えられない。
そう訴えたのに、それすら目の前の男の神経を逆撫でしたらしい。
「へえ?大隈には腰を振ったのに俺には嫌なんですか。そういえば初めて抱かれたときからアンタは俺に抱かれるときよりアイツに抱かれるときのほうが素直だったなぁ。」


言いながら、佐伯は己の台詞が不快で仕方なかった。


理由はわからない。
ただ、自分には決して従おうとしないくせに三日もの間大隈に良いようにされていた御堂への苛立ちばかりが膨れ上がる。


佐伯は抗う身体を押さえつけ、己のモノを御堂のそれと一緒に扱き上げる。
「ぃっ・・、あっ、ぅ・・・い、たい・っ、いやだ、ぁ・・っ」
今日も一日中甚振られた性器は佐伯の動作に痛みを訴え、御堂を苛んだ。
大隈の執務室で飽くことなく陵辱された身体はもう限界だ。

肉棒に、玩具に、異物に甚振られ続けた肉体は既に、快楽を苦痛にしか変換できない。
悔しくて悲しくて辛くて、とめるすべも無く涙が溢れる。

「くそ・・っ」

涙を流しながら自分を拒む御堂を見て佐伯は舌打ちをした。


訳も無く酷く不快だ。
無駄な抵抗をする御堂は嗜虐心を心地よく刺激する光景だったはずなのに。

逃れられないと知りながらも逃げようとするその動きに苛立つ。


己のモノが勃ち上がりきる。
未だ半勃ちの御堂のそれはそのままに、力の入っていない脚を抱えて晒した奥の入り口に思い切り性器を突き刺した。



「あ゛、あ゛ッッ!!」



白い背がグンと撓り、限界まで反った喉から苦痛に満ちた声が上がる。
無意識に逃げようとする腰を引き寄せて深く穿つ。
男に抱かれるものへと作り変えられた身体は肉で出来た凶器を易々と飲み込んだ。
「ぃあっ、あっ・・や、ッ・・・ひぅっ、ああ・・っっ」
「ほら、もっと善がれよ淫乱!」
佐伯はモヤモヤと澱む苦い感情に任せて、力の入らない身体をガクガクと揺さぶる。

眉根を寄せて衝撃に耐える御堂から漏れる声はやはり苦痛を訴え、惨めに揺れる性器は硬度を増さない。

「ちっ・・・」

理由は明らかに、今に至るまでに抱かれすぎたせいだ。
己の行為に芳しい反応を返さないこの身体は、昼間は老いぼれた身体の上に乗って乱されるまま淫靡に乱れたのだ。
音ばかりの否定をしながら卑猥な嬌声を惜しげもなく響かせ、貫かれるままに白濁を迸らせては陵辱者を喜ばせたのだ。


不快だ。




自分ではない男に抱かれて善がり狂った身体が己の愛撫に反応しないことも

自分の知らないところで御堂が大隈に陵辱され続けていたことも

それを御堂が受け入れていたことも。




「くそ・・・!」

佐伯は御堂の膝裏を掴むと大きく股を開かせ、御堂の両脇に膝を押し付けた。
御堂の身体は限界まで折り曲げられ、結合部が上を向く。
イラついて仕方ない。
それをぶつける様に佐伯は腰の動きを再開した。
「ぃっ、ぁ・・・っ、ッッ!く、はっ・・・!!」
文字通り突き刺すようなその動きに御堂が引きつった悲鳴を上げる。

涙の痕が消えない滑らかな頬は青ざめていくばかりで赤みは差さず、わななく唇から漏れる声にも一向に艶が混ざらない。


御堂は苦しくて痛くて、括られた手で佐伯の胸を叩いて必死でそれを訴えた。
だが快楽を感じずに抗ってばかりいる御堂に佐伯の苛立ちが増し、責め苦は激しさを増すばかり。


胸を叩く手も、涙を流す瞳も、寄せられた眉も、何もかもが気に入らない。



アメジストの瞳に宿っているのは紛れも無い懇願と降伏だったが、あれほどそれを望んでいたというのに腹の底の澱みが激しく波立つばかりで高揚など微塵も無い。





その夜は結局最後まで、御堂が快楽の喘ぎを漏らすことは無かった。











「・・・・」
佐伯は萎えた自身を御堂から抜き、ぐったりとソファに沈んだ彼を見下ろした。
最後にはもう声さえ出せぬ状態だった彼は、血の気を完全に失った顔で意識をなくしている。
だらりと力をなくした脚を床に下ろすと、腫れた後孔から佐伯の欲望の証しがドロリと零れ落ちた。
御堂は一度も達することも無ければ、性器を完全に勃たせることもなかった。
それもこれも、大隈が御堂を独占した結果だった。

(いつか分不相応な顔をしだすだろうとは思っていたが)

それがここまで自分に不快感をもたらすとは予想外だった。
痛みと圧迫感しか感じられずに苦しむ御堂を攻め立てながら、佐伯はその不快につける名に思い至っていた。


独占欲だ。



(御堂は俺のものだ)



手折ったのも組み伏せて踏みにじったのも自分だ。

淫らに喘がせ、恥辱に悶えさせたのも。

あの誇り高く美しい男をここまで堕としたのは自分だ。



ならばそれに触れるのも自分だけでいいはずだ。



大隈に接近したのは自分に反抗した御堂への罰。
(もうアイツは用済みだ)
どうもあの男は自分など大した存在ではないと鷹を括っているらしいが、佐伯にしてみればそれこそ愚の骨頂である。
大隈が握っているものは高々佐伯の人事権にすぎないが、佐伯には、その気になれば人間の一人や二人煙のように消してしまえるような男がついている。
この後も煩いようなら、彼に一言「消せ」といえばそれで済む。
佐伯は御堂の頬に指を滑らせた。

「アイツを消してやるよ、御堂。アンタは俺だけの玩具でいればそれでいい。」


俺だけを見て

俺だけに抱かれ


俺のモノだけをしゃぶって善がっていればそれでいい。



「アンタが身悶えるのも恐れるのも憎悪するのも抗うのも、俺だけでいい。」
そこで佐伯の口角がクイと上がった。
満足のいく案を思いついた。




「アンタをここに閉じ込めてやる。アンタは俺以外の誰も見なくて良い。俺以外の誰にも見られなくて良い。」




佐伯は御堂の手首からネクタイを取る。
紅く痕のついたそこを指で撫でながら眼前に晒された裸体を鑑賞する。

考える事は、この美しい裸体に何色の拘束具が似合うか、だ。






佐伯はまだ、独占欲の核にある己の感情を知らないでいた。













10000HITリクエストにいただいた「Posession-所有-」の続きです。
二月にリクいただいたのに実現まで三ヶ月もかかってしまって本当にごめんなさい・・・心から土下座します。。。
どの程度のエロを入れて良いか分からなかったのでちょっとヌルくしました。佐伯に抱かれても感じない御堂さんは書いてて結構楽しかった。やーい眼鏡め!(ぇ